戦うか、逃げるか: 逆境を乗り越えて強くなるリーダー

厳しい局面に直面したとき、リーダーどのように対応するのでしょうか。逆境の中で、上級幹部が推進力とレジリエンスを発揮することの重要性についてご紹介します。

 

推進力とレジリエンスの定義      レジリエンスがもたらす利点      リーダーのレジリエンスを高める方法

 

市場が予期しない形で動いたり、危機が起きたり、経済の逆風が吹き荒れたりした際、リーダーには「戦う」か「逃げる」か、2つの選択肢しかありません。困難に立ち向かい、創造力を発揮して、逆境の中で企業を導くための適切な解決策を摸索するでしょうか?それとも守りに入り、過去には通用したものの、今のビジネス環境では効果が見込めそうにない、無難に見える時代遅れの戦術にまた頼るのでしょうか?

今日、最も成功しているリーダーは、困難や前例のない事態に直面したときに「戦う」ことを選ぶ人たちです。逆境にも粘り強く、活力をもって立ち直り、組織を率いていきます。

 

あらゆる方面からプレッシャーを受けたとき、レジリエンスのあるリーダーは組織を奮い立たせ、皆に自信を植え付けます。困難な状況を乗り越えた先に、さらに強くなった自分たちの姿があるのだと信じさせるのです。 

 

 

リーダーシップの文脈における推進力とレジリエンスとは?

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困難な目標に熱意と自信を持って取り組む

 

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困難な状況でも冷静さと楽観性を保つ 

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指示を待たずに、自主的に行動できる   

 

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競争心が強く、キャリアや影響力の面で上昇志向を持っている

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収益面に焦点を当てて目標を追求する 

 

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批判を、冷静に、かつ品位を持って受け止める 

 

 

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「レジリエンスとは、ただやみくもに突き進むことではありません。リーダーには、現実に向き合い、状況を率直に語ったうえで、それを乗り越えるための道筋を明確にすることが求められます。多くのリーダーが、困難な状況に対して楽観的すぎる見方や希望的観測に頼って語ろうとする場面を目にしてきました。しかし実際に組織やそのメンバーが必要としているのは、透明性と誠実さ、そして進むべき道への確信です」

Dana Landis
ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、リーダーシップアドバイザー

 

 

推進力とレジリエンスがリーダーシップスキルとしてこれほど重要な理由とは?

レジリエンスのあるリーダーは、たとえ先行きが不透明であっても、大胆な一方で慎重に考え抜かれた決断を下すことを恐れません。差し迫った状況から少し距離を置いて、組織が共感し、支持できる長期的なビジョンを掲げることができます。

リーダーシップにおけるレジリエンスは、単なる粘り強さにとどまらず、感情的知性、柔軟性、成長志向のマインドセットも含んでいます。レジリエンスのあるリーダーは、逆境を学びの機会と捉え、失敗から立ち直ることの大切さを行動で示します。

レジリエンスとは、結果を顧みずに突き進むことではありません。リーダーは、目の前に迫る危機の全容を見極め、その危機が現実となった際に、組織とその従業員に及ぼす影響を認識しなければなりません。

こうしたバランスをとって進むリーダーは、通常、以下のような成果を引き出すことができます。

01

成長志向を育む力が高い  

レジリエンスの高いリーダーは失敗を恐れません。失敗したとしても、それを成長の機会として捉え直します。困難な状況に直面しても、組織を前進させるための創造的な方法を見出だせるという自信があります。この成長志向のマインドセットには、企業全体において継続的な改善と計算されたリスクテイクのカルチャーを育み、イノベーションと組織の機動力を高めます。  

 


02

不確実な状況への対応に優れている 

レジリエンスの高いリーダーは、未知の状況においても落ち着いて対応します。不確実な状況に直面しても、視野が狭くならず、自分だけで問題を解決しようとはしません。優柔不断となって思考停止に陥ることもありません。その代わりに、新たな視点を取り入れ、斬新なアプローチを試みながら、前に進む道を切り拓いていきます。  

 


03

信頼構築に長けている 

レジリエンスの高いリーダーは、困難な状況についてチームに正直に伝えます。現実から目を背けず、直面している課題について包み隠さず伝えます。その誠実さにより、結果として、組織全体に信頼とオープンなコミュニケーションのカルチャーが醸成されます。チーム間で率直に意見が交わされるようになり、問題の早期解決につながります。 

 


04

問題を未然に察知する力に優れている

レジリエンスの高いリーダーは、2つのことをよく知っています。1つ目は、過去の実績が将来の結果を保証するものではないということであり、2つ目は、自分たちではどうしようもない外部要因が多々あるということです。海辺のサーファーと同じように、レジリエンスの高いリーダーは水平線に目を凝らし、これから来る波の大きさや形に応じて立ち位置を調整します。常に警戒を怠らず、問題に未然に対応します。問題が起きてから対応するのでは、往々にして手遅れとなるためです。

 


05

行動に向けて組織を鼓舞する力に優れている

危機に際して、組織の中で不安が広がるのは当然のことです。レジリエンスの高いリーダーなら、その不安をうまく管理できます。将来のビジョンを明確に打ち出し、何よりも、全員がその方向に足並みを揃えられるように導きます。レジリエンスの高いリーダーはコミュニケーション能力にも長けています。今の困難な状況について率直に語る一方で、現実に根ざした前向きな未来像を描き、希望と方向性を示します。    

 


 

リーダーの推進力とレジリエンスを高めるには

逆境に遭った際に、レジリエンスを発揮するのが得意な人も、そうでない人もいます。しかし、経営幹部には常に、リーダーシップのスタイルを部分的または全面的に磨き直すチャンスがあります。レジリエンスは、自分自身のエネルギーや心構え(マインドセット)に意識を向けることで大きく高めることができます。また、個人にも集団にも響く説得力のあるストーリーを通じて、組織全体に波及させることもできます。

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まずは自分から始めます。優れたリーダーは貪欲にデータを吸収し、自らの役割における日々の業務の枠を超えて好奇心を持ち続けるための時間を、スケジュールの中に意識的に確保しています。自己認識を「自己理解」へと昇華させており、状況の良し悪しに応じて自分がどう反応するかを考慮して、行動や習慣に反映させる術を備えています。また、何が自分のストレスや、エネルギーの消耗につながるのかを理解しており、心身を回復するための方法を持ち、それを一貫して実践しています。  

 


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強固な人脈。リーダーには、組織の内外、そしてさまざまな階層にわたる幅広く豊富なネットワークが必要です。優れたリーダーは多くのつながりを持ち、部下や同僚、そして幅広い外部の関係者から多角的・全方位的なインプットを得ています。こうした洞察は、継続的な自己認識や自己成長に不可欠です。また、信頼できる同僚やチームメンバーの助けを得ながら、新たな直感や判断を客観的に検証し、必要に応じて軌道修正を行うことで、より最適な意思決定へとつなげています。

 


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意図的なインクルージョン。優れたリーダーは、あらゆる方面からの多様な視点を積極的に引き出し、それを意思決定プロセスに取り入れます。どれほど視野が広く、頭の回転が速いリーダーでも、自分一人で進めようとせず、積極的に他の人の知恵を得て課題に取り組むことで、パターン認識力が向上します。リーダーには誰しも、率直な意見を伝えてくれる「自分の非公式なブレーン」が必要です。それにより、現実を見誤らず、正しい判断を下すことができます。シニアリーダーこそ、「ありのままの真実」が耳に届かないというのはよくあることです。だからこそ、真に優れたリーダーは、自ら真実を探し求めます。

 


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ストーリーが持つ力。リーダーが自らの成長の過程に責任を持ち、内省の時間を大切にする上で、ストーリーは誠実さや人間味を見せるうえで非常に効果的な手段となります。リーダーの中には生まれながら話が上手な人もいますが、話を作り込みすぎたり、上辺だけに聞こえたりしないよう注意が必要です。一方で、自分のことを語るのが苦手なリーダーもおり、その場合は構成を練り、練習やフィードバックを通じて、心に残るストーリーを磨いていく必要があります。

 


 

推進力とレジリエンスの実践例

Sustainable Leadership」(Clarke Murphy著)から抜粋

Svein Tore

Svein Tore Holsether
CEO Yara International 

ノルウェーの化学メーカーYara Internationalは、電動完全自動航行船舶「ヤラ・ビルゲランド号」に1,500万ドルを投資しました。世界初の排出ゼロのコンテナ船と目されるヤラ・ビルケランド号は、ノルウェー南部にある同社の肥料生産施設から北部の港町ブレヴィクまでのトラック輸送の年間約4万回分に相当すると見込まれています(その結果、約1,000トンの炭素排出量を削減)。しかし、自動運航船舶に関する海事規制がまだ整備されていないため、同社はさまざまな地域での法的責任など、多くの課題を乗り越えなければなりません。それでもSvein氏は、リスクを取る価値があると考えました。「リスクを取りすぎて失職する方が、行動を起こさなかったことで責任を問われるよりもましだと思ったのです」。

出典: Sustainable Leadership、ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、2021年

 

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リーダーシップの未来

世界は変化し続けています。だからこそ、リーダーシップも臨機応変に変わらなければなりません。

 

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企業は、変化を予測して備える力と、企業を安定的に導くこと力の双方に長けたリーダーを、どのように見極めればよいのでしょうか?