常に正しい必要はない—今リーダーシップに求められる「好奇心」とは

あなたの会社のリーダーは「常に正しくあること」にこだわっていませんか? それよりも好奇心を持つことが重要です。好奇心と適応力がなぜ欠かせないリーダーシップ特性なのか、そしてそれらを発揮する方法について探ります。

 

好奇心と適応力の定義      リーダーシップにおいて好奇心がもたらす利点      好奇心を伸ばすには  

 

経営幹部たちは社内で昇進するにつれて、長年の経験を積み、パターン認識能力を磨き、ビジネスにおける直感力が養われます。豊富な知識と経験をベースに、「やるべきことが常にわかっている」という実務家としての地位を確立できます。しかし、積み重ねてきた知識と経験は、「自分は答えを何でも知っている」という過信につながりかねません。最悪の場合、そのことが原因でリーダーとしての信頼を失うこともあるのです。

リーダーが「全部わかっている」と過信すると、ラーニングカーブは大きく停滞し始めます。自己満足に陥り、過去の経験ばかりを頼り始めます。これまで通りのやり方を当てにして、新しい知見を受け入れなくなります。急速な進化し続ける現代において、こうしたリーダーの成長の停滞は重大なリスクとなります。適応力、俊敏性、継続的な進化が、持続的成長には不可欠だからです。

今日、最も成功しているリーダーたちは、学び続けるマインドセットを育む必要があることを理解しています。好奇心を持ち続け、疑問を持ち、新しいアイデアや人間関係に柔軟であることは、単なる強みではなく、今や必要不可欠なものなのです。

 

リーダーシップの文脈において好奇心と適応力とは?

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曖昧さや変化に対して柔軟で、落ち着いて対応できる。

 

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独創的、創造的、実験的なアイデアを追求する。

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さまざまな状況に合わせて行動を見極める。

 

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ルールに縛られず、リスクを負う覚悟がある。

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生涯学習の姿勢を持ち、データに基づく意思決定を受け入れる。

 

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重要な場面でも冷静さと決断力を保つ。

 

 

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「好奇心は素晴らしい特性であり、自分が常にその場で一番賢い人物でなければならないという個人的なプレッシャーにとらわれない、自信のあるリーダーによく見られます」

Ty Wiggins
ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、リーダーシップアドバイザー
The New CEO」 (ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、2024年)の著者

 

 

好奇心と適応力をリーダーシップスキルとして重視すべき理由とは

本当に好奇心旺盛なリーダーは、慢心やエゴにとらわれにくい傾向があります。異なる意見や指摘を受け入れ、間違いを認めることにも抵抗がありません。そのため、本人が手に入る情報を広く受け入れるのはもちろん、周囲の人も報復を恐れずに、本音や感じていること、見えていることを率直に伝えやすくなります。

ただし、好奇心は上手く活用しなければ、組織に混乱を招くおそれがあります。好奇心が抑えきれないと、目先の新しいことや次の大きなトレンドを次から次へと追いかけ、焦点を見失い、リソースを浪費してしまう原因となります。優れたリーダーは、自らの好奇心をフォーカスに絞られた探究や計算されたリスクテイクへと向け、常に変化に振り回され疲弊するような状態に陥るようなことはありません。

リーダーが探究と学習のカルチャーを育むことができれば、通常は次のようなメリットがあります。

01

問題解決力が向上する

好奇心旺盛なリーダーは、先入観なく問題に取り組みます。慣れ親しんだ解決策をむやみに適用するのではなく、深く掘り下げて根本原因を突き止め、従来の問題にも型破りなアイデアを持ち込みます。本質を突く質問を投げかけ、さまざまな視点から検討し、一見無関係なアイデアを結び付けます。不確実なことや未知の領域にも臆せず踏み込めます。そして、周囲にも各自の考えを共有するよう促します。あらゆる協力者を巻き込むことで、問題解決の手段が拡充され、創造的または型破りな解決策が生まれやすい環境が育まれます。

 


02

意思決定力が高まる

好奇心旺盛なリーダーは正常性バイアスに陥ったり、古い情報に基づいて決断を下したりする可能性が低くなります。代わりに、自らの仮定に疑問を投げかける情報を積極的に探します。このように常に知識を追い求める姿勢があるからこそ、幅広いデータと視点を検討したうえで意思決定を行うことができます。また、より広範な影響を考慮できるようになるため、よりバランスのとれた決定を下せるようになります。

 


03

変革が成功しやすくなる

好奇心旺盛なリーダーは、新しい概念を学び理解したいという欲求があるため、変化を受け入れやすくなります。自信を持って戦略を転換し、新しいテクノロジーを採用し、変革期でも自信と熱意を持ってチームを導くことができます。変化のための変化に陥ることなく、会社の中核となる戦略や長期的な目標に根ざした形で変革の取り組みを進めます。

 


04

人間関係が強固になる

好奇心は他者への純粋な関心を育み、より深く、より意味のある関係を築くことにつながります。好奇心旺盛なリーダーは、思いやりのある質問を投げかけ、親身になって話を聴き、異なる視点を理解しようとします。この姿勢は信頼と尊敬を築くだけでなく、多様な意見が尊重される、より包括的なカルチャーを作り出します。好奇心旺盛なリーダーは優れたコラボレーターでもあります。難題を解決するために、他部門、他業界、さらには競合他社まで巻き込み、適切な人材を積極的に招集します。

 


05

継続的な成長

好奇心は個人の成長を促す重要な原動力です。好奇心旺盛なリーダーは往々にして、自らの慣れ親しんだコンフォートゾーンを抜け出し、柔軟な姿勢を保ちながら変化に対応する傾向があります。学び続ける姿勢を持つことで、スキルを磨き、知識を最新の状態に保ち、リーダーシップのスタイルを常に進化させることができます。その結果、時間が経って役割に求められるものが変わっても、常に時代に合った、効果的なリーダーであり続けるのです。

 


 

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「リーダーの好奇心は多くの場合、思考の幅を広げます。解決策を探るなかで意外なデータソースに着目し、目の前の文脈や課題から大きく外れた道をあえて進んでいくこともあります。好奇心旺盛なリーダーは、自分の前提が覆されたり、これまで考えたこともなかった新しいアイデアが浮かんだりすると、目を輝かせます。新たな視点をじっくりと検討し、それをじっくりと受け止めながら、自分の考え方にどう影響するかを見極めようとする傾向があるのです」

Dana Landis
ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、リーダーシップアドバイザー

 

 

リーダーの好奇心を高めるには

もちろん、好奇心を持ってリーダーシップを発揮するのが得意な人もいれば、そうでない人もいます。しかし、経営幹部には常に、リーダーシップのスタイルを部分的または全面的に見直すチャンスがあります。好奇心を持つことは、聞き上手になることに似ています。注意力、集中力、自己認識、自己制御によって、好奇心は大きく向上します。

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まずは自分から: 優れたリーダーは貪欲にデータを吸収し、日々の枠を超えて好奇心を持ち続けるための時間を、スケジュールの中に意識的に確保しています。自己認識を「自己理解」へと昇華させており、状況の良し悪しに応じて自分がどう反応するかを考慮して、行動や習慣を調整する術を備えています。また、何がストレスやエネルギーの消耗を引き起こすのかを理解し、心身を回復するための方法を持ち、それを一貫して実践しています。

 


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強固な人脈: リーダーには、組織の内外、さまざまなレベルにわたる幅広く豊富なネットワークが必要です。優れたリーダーは多くのつながりを持ち、部下や同僚、そして幅広い社外の関係者から多角的なインプットを得ており、これらの意見は継続的な自己認識と成長にとって不可欠です。また、信頼できる同僚やチームメンバーの助けを借りながら、直感や判断を客観的に検証し、必要に応じて軌道修正を行うことで、最適な意思決定へとつなげています。

 


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意図的なインクルージョン: 優れたリーダーは、あらゆる方面からの視点を積極的に意思決定プロセスに取り入れます。どれほど視野が広く、頭の回転が速いリーダーでも、自分一人で進めようとせず、積極的に他の人の知恵を借りて課題に取り組むことで、パターン認識力は向上します。リーダーには誰しも、率直な意見を伝えてくれる「顧問団」が必要です。それにより、現実を見誤らず、正しい判断を下すことができます。シニアリーダーこそ、「ありのままの真実」が耳に届かないというのはよくあることです。だからこと、真に優れたリーダーは、自ら真実を探し求めるのです。

 


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ストーリーの持つ力: リーダーが自らの成長の過程に責任を持ち、内省の時間を大切にするようになると、ストーリーは誠実さや人間味を見せるうえで非常に効果的な手段となります。リーダーの中には生まれながらの語り手もいますが、話を作り込みすぎたり、上辺だけに聞こえたりしないよう注意が必要です。一方で、自分のことを語るのが苦手なリーダーもおり、その場合は構成を練り、練習やフィードバックを通じて、心に残るストーリーを磨いていく必要があります。

 


 

好奇心と適応性の実践例

An excerpt from The New CEO, a book by Ty Wiggins

Ramon Laguarta

Ramon Laguarta
CEO PepsiCo

PepsiCoのRamon Laguarta氏は、周囲の人たちが本音で話してくれる場を作ることに力を入れています。「これはCEOとしてできる最も大事な仕事の1つであり、私が毎日意識していることです」。

同氏はCEOになる前からこの考え方を取り入れており、サクセッション計画が進んでいく間に、自分がCEOに就任したら何をしたいのかを熟考する時間を持ちました。

「会社が利益率ばかりにフォーカスしすぎていると感じていたので、成長重視に方向転換させたかった」と語る同氏。「次に、企業カルチャーを大きく転換させ、より起業家精神を持ち透明性の高い組織にしたいと考えていました。最後に、デジタル化と環境変革の取り組みも加速させたいと考えていました」。

あくまでも個人的見解に過ぎないことを承知のうえで、自分のアイデアを試してみたくなり、会社全体で(リーダーシップチームとその下の階層の人たちを交えて)一日セッションを実施して、これらの分野についての考えや意見、共創を求めました。Ramon氏にとってそれは、単にフィードバックや意見を募る手段というだけでなく、会社の新たな文化を「トップダウン型」ではなく「ボトムアップ型」で築いていく姿勢を明確に示す行動でもありました。「自分なりのビジョンはありましたが、戦略を共に作っていく仲間に権限を与えることに決めました。その結果が予想以上にポジティブで、いかに自分の助けになったかを痛感しています」と振り返っています。

 

出典: The New CEO, ラッセル・レイノルズ・アソシエイツ、2024年

 

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世界は変化し続けています。だからこそ、リーダーシップも臨機応変に変わらなければなりません。

 

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